企画のツボ

なにか企画しなければいけないことはたくさんあります。私の業界では、学会のセッションや研究会や会議だったり、雑誌の特集や報告書のとりまとめといったことです。こうした企画をスムースに行うコツは、日取り(または締め切り)、人(講演者や執筆者など)、企画内容の詳細の順で決めていくことです。逆に、企画の詳細、人、日取りの順でやると失敗します。もうひとつのコツは、すべてをきっちり決めてから始めるのではなく、決められるところから決めていき、選択の幅を意図的に狭めていくことです。以下では、人を集めて行う企画を前提にお話しします。原稿を集める企画も、似たようなものです。ここでは、小規模な企画を想定しています。具体的には1〜3人の企画者と10名以下の講演(執筆)者です。

企画の大枠だけ決める まず、企画の趣旨を400字以内でまとめましょう。ちなみに、この文章の冒頭の段落は300字弱です。タイトルと趣旨で、企画の大枠を決めます。「淡水イルカのシンポジウム」とか、「次期計測機器モデルの仕様決定会議」などをタイトルにして、その要点を短くまとめます。企画者が複数いる場合には、これを皆にメールして、期日を区切って意見を求め、修正した趣旨書をつくります。細かいことは、あとで決めましょう。なぜなら、「日取り」と「人」をクリアしたあとでないと「細かいこと」は決められないからです。なお、趣旨を文章にしておくことが大切です。配ることができますし、修正することもできます。ほんわかしたアイデアだけを電話や話し合いで言葉にしても、企画はすすみません。はっきりと記載しましょう。

日取り最優先 企画運営でもっとも大切なのは日取りです。企画者+どうしても必要な講演者などの予定を聞いて、空いている日にちを決めます。とにかく、必要最小限の人間が参加できる日にちを決めてしまうのです。候補日のリストを回覧し、必須参加者が空いている日を同定し、日取りを速やかに決定して選択の幅を意図的に限定するのです。世の中、だいたいみんな忙しいです。3ヶ月先の皆の予定が約5分の1(1ヶ月に6日間)埋まっているとしましょう。この状況では、3ヶ月先の任意の日が全員空いている確率は、5人なら32.8%、10人なら10.7%です。わかりますか? 日取りを合わせるのがどれほど重要で難しいか。逆に言えば、必要な人間の予定を先に押さえれば勝ったも同然です。予定さえ押さえておけば、あとはなんとでもなるのです。忙しい人は、一度決めた予定は、なにがなんでも守ります。主要メンバーが参加できる日取りの決定で、企画の8割は終わったといってもよいでしょう。どうしても成功させたい企画なら、エイヤで、1年くらいまえから日にちだけ決めてしまいましょう。直前でじたばたするよりずっと楽です。それに、参加するみなさんの心の準備も万全になりますよ。

日取りオークション 15人ほどで構成される研究会を、3ヶ月に1度主催している。参加者はとても忙しい方ばかりで、メールのやりとりでも日程を合わせるのは至難の業だ。ぼやぼやしていれば、1週間経つと意中の予定日がダメになる。そこで、いつも研究会の終わりに次回の日取りだけ決めてしまう。スクリーンに3ヶ月先のカレンダーを映して、「はい、この日のご都合が悪い方?」「私は月曜日と木曜日がだめです」「では、この日はいかがでしょう?」「そこはOKです」「よこざんすか? みなさんよろしいですね」・・・無言の同意・・・。「はい、では次回はこの日に決定。場所と講演者は追ってお知らせします」という具合だ。選択の幅をこの時点で狭めておくと、あとの作業はとても楽になる。

場所を決める 場所は、都市まで決まっていれば、ここで無理に施設まで決める必要はありません。企画が固まって人数が読めてから決めてもいいのです。しかし、選択の幅を狭める原則から言えば、あらかじめ人数読みをして、この段階で仮押さえしておくくらいの機敏さがほしいです。

人を決める ここで、企画の趣旨書を示して人に声をかけます。この時点で声をかける人は、替わりがいる人です。こちらから日にちを指定して、いかがですか?と打診し、だめなら替わりの人に打診します。すでに日取り決定で主要メンバーは押さえてあるのですから、この段階では候補者につぎつぎにあたればよいのです。企画趣旨を満たせるよう、候補者の数は予定者の倍くらいあったほうがよいです。

仲良しグループの飲み会のノリで企画するのはやめましょう。−−−「久々に飲みたいよね」「なにが食べたい」「焼き鳥」「やっぱ鍋でしょ」「誰呼ぶ?」「この前の仲間でどう? メールで一発!」「じゃ人数もたいしたことないよね」「金曜日の講義が終わったら、○○ちゃんとどっかで飲み始めてるから、あとから来る人は携帯で」などという企画は、仲間うちだけにしましょうね。この企画では、もっとも重要な「何時にどこに集合し、どの店で宴会をするのか」が決まっていないです。ついでに言えば、参集範囲も不明確です。仲間で飲みたいという気持ちを共有しているだけで、物事がすすんでいません。携帯があれば、集合場所や時間なんて決めなくても、内輪ではなんとかなるでしょう。でも、こんな企画は社会では通用しませんよ。自分の内と外を、しっかり区別しましょう。まさか、決めることで、強引だと思われるのがイヤとか、誰かを傷つけるかも、なんて余計な心配してないでしょうね。若者(だけじゃないけど)の企画運営が下手に見えるのは、私の年のせい?それとも携帯電話のせい? 

企画の詳細を決める 次に、企画の詳細を決めます。企画内容は、参加できる人によっても変わります。大枠は堅持するにしても、細かいところは、参加できる人次第です。前に決めたタイトルと趣旨書に、時間割と演者、演題をくっつければ、シンポジウムのプログラムのできあがりです。参加型企画でも、依頼原稿の特集でも、中身の項目がきまれば、それを順番に並べるだけで、企画案のできあがりです。ここでも、文字にしておくことが大切です。修正が楽ですし、ホームページに掲載すればそのまま募集や案内に使えます。最終的に、企画委員の中で承認し、正式な企画とします。

募集する できあがった企画をメールで流すなりホームページに掲載するなりして、関係者に知らせます。募集期限と連絡先を明記しましょう。また募集人数の上限に達した場合、期限前でも募集を打ち切ることも示します。

小細工する 企画の楽しさはこれからです。デモや実験、現場見学、特集記事のコラムやきれいな写真、事後の懇親会などなんでもOK。大枠が決まっていれば、その枠の中であとは自由にアイデアを出しましょう。無限の自由度では、豊かな発想は出てきません。枠を自ら決めて、その中で最適解を探すのがおもしろいです。

私になにか依頼する場合も、このような段取りだと助かります。行けるのかどうか、間に合うかどうかもわからない企画に対して、よろしくお願いしますと言われても、対処しません。もっと困るのは、あいまいな日程を提示されただけで、日取り確定まで長い間待たされ、そのあいまいな期間の予定が決められないことです。暇な人ほど日取りの決断が遅く、あいまいに指定された日程をあけるために、こちらがどれほど調整をしているか気付かないようです。日取りや締め切りを依頼時に相談するか、あらかじめそちらで決めてください。なお、一度決めた日にちを変えるのはよほどの理由がない限り御法度です。信用を失います。最後に、「ネタにされたかなー」と胸が疼いているみなさん、ごめんなさい。こうすればもっと楽にできますよ、というアドバイスのつもりです。


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