資源選択性の統計解析

 

資源選択性とは?

生物にとって生息場所(ハビタット)や食物は生活や繁殖を行う上で不可欠な“資源”と見なすことができます。異なる種類の資源が同時に存在するとき,利用できる資源の割合と動物が実際に利用している資源の割合が異なっていれば,生物は資源を選択的に利用していると考えられます。資源選択性の解析は生物の生存と再生産のために必要な資源の特徴を明らかにし,生息環境の保全,生態系の機能と構造の理解,採捕効率の向上や無駄な混獲の回避などに役立つ情報を提供します。このページでは資源選択性の解析に用いられる統計解析手法について解説します。

用語の説明

食物や生息場所など生物が生きていく上で必要な資源

資源選択性の統計

解析法

資源の利用可能性と利用度を比較するために色々な統計解析法が考案されています。多くの解析手法では,1)資源全体を考えたときに選択性があるかどうかを判断してから,2)個々の資源が選択的に利用されているかどうかを確認する2段階の仮説検定が採用されています。主な方法を以下に紹介します。

 1. カイ2乗分析を用いる方法

利用度の観測値が資源の利用可能性から予測される期待値と一致しているかどうか,カイ2乗適合度検定を用いて全体の仮説検定を行います。カイ2乗適合度検定を使うので利用可能性は既定値であり誤差を含まないものと見なします。利用度の観測データは独立であると仮定しています。個体別のデータは扱えないので全個体のデータをまとめて解析します。生物の集群性や観測の時間間隔などによって利用度に相関がある場合や,個体によって観測されやすさに違いがある場合にこの方法を用いるのは不適切です。

1a. Neu法


個体別の反復観測データを用いて個体別にカイ2乗適合度検定を行い選択性の有無を調べ,集団としての選択性の有無に関しては個々の結果を統合してカイ2乗値を求める方法です。(White and GarrotのGoodness-of-Fit testの略)

参考文献

1b. Marcum法


資源の利用可能性が規定値ではなく,サンプリングされたデータからの推定値である場合に,利用度と利用可能性の相違をカイ2乗一様性検定を用いて検証する方法です。観測データの独立性を前提としていること,個体別の解析ができないことはNeu法と同じです。

参考文献

資源(resource)

利用可能性(availability)

利用度(usage)

1c. WGGF法

資源選択性解析プログラム集(ver 1.1)

岡村さん制作の,色々な手法を用いて資源選択性を解析するためのプログラム集をここからダウンロードできます。統計解析ソフトR用のスクリプトとサンプルデータが含まれています。具体的な使用法はreadme.txtをご覧下さい。また,バグや不具合などのご意見がございましたら下記清田または岡村までご連絡ください。


収録されている解析法

         Neu法

         Marcum法

         WGGF法

         Johnson法

         Friedman法

         Compositional Analysis(Aebischer法)

         Manlyの方法


ver 1.1では,Manly.rで利用可能性が0のとき検定するとエラーが出る不具合を修正してあります。


Dasgupta and Alldredgeはラジオトラッキング・データを用いた生息場所の選択性解析を念頭に置き,カイ2乗分析を拡張して個体間の相関関係を含めて解析する手法を考案しています。

1d. データの相関を考慮したカイ2乗分析

参考文献

参考文献

 2. 順位を用いる方法


利用可能性と利用度のちがいを順位変換して検討するノンパラメトリック法です。

参考文献

2a. Johnson法

利用可能性と利用度の順位差を利用して検定統計量を作る方法で,解析結果として資源に対する選択性の順位が得られます。個体間の独立性は必要ですが,個体内の観測データは独立でなくても構いません。この方法は資源として利用されているかどうか疑わしいカテゴリを解析に含めるか含めないかによって結果が左右されにくい頑健性を持つと言われ,食物選択性解析にしばしば用いられる方法です。この方法を紹介したJohnson (1980)は,資源利用の階層性の概念を提唱した論文としても有名です。


個体ごとに各資源カテゴリに対する利用度の割合および利用可能度の割合を算出し,その差の順位に基づいてFriedman検定を行う方法です。利用可能性は個体ごとに異なっていてもよく,順位変換を用いるので資源カテゴリ内のデータは独立でなくても構いません。

2b. Friedman検定を用いる方法


Friedman検定と同様に各資源カテゴリに対する利用度の割合および利用可能度の割合を算出し,その差の順位に基づいて検定を行う方法ですが,個体別の利用度と利用可能性の割合の差によって重みを付けており,選択的な利用の程度が大きな個体があれば選択性を検出しやすい傾向をもちます。

2c. Quade検定を用いる方法

 3. 対数比変換法

利用可能性と利用度の違いをカイ2乗検定を使って調べる方法です。


ラジオトラッキング・データを用いた生息場所選択性分析に適した方法として考案されたものですが,食物選択性解析でも用いられています。利用可能性と利用度の違いを対数比に変換して多変量分散分析します。個体を解析の単位とし,生息場所の利用度として個体がその生息場所にいた割合を用います。比率を対数比変換することにより比率の合計が1になる制約を回避し,多変量分散分析を行うことにより説明変数を組み込むことも可能であり,最初に行動圏の選択を調べ次に選択された行動圏内の利用可能性に対する生息場所の利用を考える2段階の解析が可能である,といった特徴を備えています。個体内の観測に依存性があっても構いませんが,個体は独立に行動していることが必要です。対数比変換する際に利用度0のデータを微小数で置き換えますが,置き換え値によって系統的な誤差が生じる可能性が指摘されています。

3a. Compositional analysis (CA, Aebischer法)

 4. 距離を用いる方法


生息場所選択において利用度ではなく各出現位置とその周辺の各生息場所タイプとの最短距離を用いる方法で,GIS解析に向いています。CAの対数比変換に伴う問題を回避することができます。

4a. Distance-based analysis (DA)

 5.選択性指標を用いる方法

5a. Manlyの方法

注意点

Rスクリプト

レビュー論文

Neu法のように資源の利用可能性と利用度の値の差を比較するのではなく,両者の比に相当する選択性指数を用いて解析を行う方法です。個体別のデータがある場合,利用可能性が既知の場合/推定値の場合や,利用度が重量や比率の値をとる場合など,幅広いケースに対応可能です。


利用可能性と利用可能性の違いを指数として表す方法です。Ivlevの選択度指数などさまざまなものが考案されましたが,その多くは統計的な解析に適していませんでした。

 6.モデル解析


Manlyの選択性指標などをべースとして,ロジスティック回帰や一般化線形モデルを作り,共変量の効果まで取り込んで解析できるようにしたものです。

解析の前提必要条件とデータ特性

検定の多重性

credit

各解析法を適切に用いるためには,利用可能性データが既知であるか推定値であるか,利用度のデータは個体別に用意されているか,個体間・個体内のデータは独立であるか,統計検定量が特定の分布にあてはまると見なし得るだけのデータ数があるか,といった前提条件を満たしていなければなりません。データがこれらの条件を満たしていない場合,解析結果から誤った判断を下す恐れがあります。

より詳しい内容は下記の文献にて解説しています:


清田雅史・岡村寛・米崎史郎・平松一彦. 2004. 資源選択性の統計解析-I. 基礎的な概念と計算方法. 哺乳類科学 44(2): 129-146. ▷ダウンロード

清田雅史・岡村寛・米崎史郎・平松一彦. 2005. 資源選択性の統計解析-II. 各種分析法の紹介. 哺乳類科学 45(1): 1-24. ▷ダウンロード


本ページは平成15年度遠洋水産研究所所内シーズ研究「資源選択性に関する数理解析手法の比較検討」の実施成果に基づくものです。


外洋資源部 岡村 寛 okamura (a) affrc.go.jp

浮魚資源部 清田雅史 kiyo (a) affrc.go.jp (現 外洋資源部)

      平松一彦 (現 東京大学 大気海洋研究所)

長崎大学  米崎史郎 (現 遠洋水研究所 外洋資源部)

           ((a) は半角の@に置き換えてください)

参考文献

参考文献

参考文献

参考文献

参考文献

実施担当者

原典:

Neu, C. W., C. R. Byers and J. M. Peek. 1974.  A technique for analysis of utilization-availability data. J. Wildl. Manage., 38: 541-545.


適用例:

Bonesi, L. N. Dunstone and O’Connell M. 2000.  Winter selection of habitats within intertidal foraging areas by mink (Mustela vison). J. Zool., Lond., 250: 419-424.

原典:

Marcum, L. and D. O. Loftsgaarden. 1980.  A nonmapping technique for studying habitat preferences. J. Wildl. Manage., 44: 963-968.


適用例:

Kilpatrick, H. J. and P. W. Rego. 1994.  Influence of season, sex, and site availability on fisher (Martes pennanti) rest-site selection in the central hardwood forest. Can. J. Zool,, 72: 1416-1419.

原典:

White, G. and R. Garrott. 1990.  Analysis of Wildlife Radio-Tracking Data. Academic Press, San Diego, 383pp.


適用例:

Dasgupta, N. and J. R. Alldredge. 2002.  A single-step method for identifying individual resources. J. Agric. Biol. Environ. Stat., 7:, 208-221.

原典:

Dasgupta, N. and J. R. Alldredge. 1998.  A multivariate χ2 analysis of resource selection data. J. Agric. Biol. Environ. Stat., 3: 323-334.


Dasgupta, N. and J. R. Alldredge. 2000.  A chi-square goodness-of-fit analysis of dependent resource selection data. Biometrics, 56:402-408.


原典:

Johnson, D. H. 1980.  The comparison of usage and availability measurements for evaluating resource preference. Ecology, 61: 65-71


適用例:

Shipley, L. A., S. Blomquist and K. Danell. 1998.  Diet choices made by free-ranging moose in northern Sweden in relation to plant distribution, chemistry, and morphology. Can. J. Zool., 76: 1722-1733.

適用例:

Poole, K. G. L. A. Wakelyn and P. N. Nicklen. 1996.  Habitat selection by lynx in the Northwest Territories. Can. J. Zool., 74: 845-850.

原典:

Quade, D. 1979.  Using weighted rankings in the analysis of complete blocks with additive block effects. J. Am. Stat. Assoc., 74: 680-683


適用例:

Alldredge, J. R. and J. T. Ratti. 1992.  Further comparison of some statistical techniques for analysis of resource selection. J. Wildl. Manage., 56: 1-9.


参考文献

原典:

Aebischer, N. J., P. A. Robertson and R. E. Kenward. 1993.  Compositional analysis of habitat use from animal radio-tracking data. Ecology, 74: 1313-1325.


応用例:

Bradshaw, C. J. A., D. M. Hebert, A. B. Rippin and S. Boutin. 1995.  Winter peatland habitat selection by woodland caribou in northeastern Alberta. Can. J. Zool., 73: 1567-1574.


原典:

Conner, L. M., M. D. Smith and L. W. Burger. 2003.  A comparison of distance-based and classification based analyses of habitat use. Ecology, 84: 526-531.


適用例:

Heisey, D. M. 1985.  Analyzing selection experiments with log-linear models. Ecology, 66: 1744-1748.


原典:

Manly, B. F. J., L. L. McDonald, D. L. Thomas, T. L. McDonald, and W. P. Erickson. 2002.  Resource selection by animals. Kluwer Academic Publishers, Dordrecht, 221pp.



多くの手法では,1)資源全体を見わたして選択性の有無を確認する,2)個々の資源に対する選択性を確認する,という2段階の仮説検定を採用しています。2)では多重比較法が用いられます。タイプIエラー率を適正に保ちつつ検出力を確保するためには,原典で採用されている方法に限らず解析の目的とデータの特性にマッチした方法をチョイスして使うのが良いでしょう。研究の目的によっては1)の全体的な選択性の検定をパスしても構いません。

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複数の種類の資源が存在するとき,対象生物が利用できる各資源の割合

対象生物が実際に各資源を利用する程度