Rule of age and size at maturity of chum salmon (Oncorhynchus keta): implications of recent trends among Oncorhynchus spp.
Morita, K., Morita, S.H., Fukuwaka, M. & Matsuda, H. (2005)
Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences, 62: 2752-2759.
[目的]
日本の水産重要種であるサケは,1970年代から回帰親魚の小型・晩熟化が進行している.平均体重は20%減少し,平均回帰年齢は0.5歳晩熟化し,深刻な問題となっている.その原因として,漁業や人工孵化放流事業による"人為淘汰説"と,環境の変化に応答して小型・晩熟化が生じたとする"環境変動説"が指摘されている.本研究では,環境変動に伴う成長低下,つまり表現型可塑性でどの程度の小型・晩熟化が生じるのか調べた.
[方法]
北海道の斜里川に回帰したサケの鱗を用いて,未成熟時の体長をバックカリキュレーション法により推定した.一般化線形模型を用いて,年齢と体長が性成熟に及ぼす影響を調べた.また,Roffの古典的な生活史模型を用いて,適応度を最大にする最適成熟年齢・体長との関係を調べた.次に,サケの体長・年齢構成模型を構築し,1970年以降の成長低下によって小型・晩熟化を説明することが可能かどうか調べた.
[結果]
得られた標本の成熟年齢および成熟体長は,3-7歳および45-84cmであった(n=3414).成長の早い個体ほど若齢かつ大型で成熟を開始する傾向が認められた.さらに,成熟年齢と成熟体長の閾値の実測値は,適応度を最大にする最適戦略と類似する傾向にあり,個々の成長に応じて可塑的に成熟を開始することが示唆された.体長・年齢構成模型を用いた模擬実験の結果,成熟の閾値が遺伝的に変化していないと仮定しても,成長率の低下だけで現実的な小型・晩熟化が生じることが示された.