Population dynamics of Japanese pink salmon (Oncorhynchus gorbuscha): are recent increases explained by hatchery programs or climatic variation?
Morita, K., Morita, S.H. & Fukuwaka, M. (2006)
Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences, 63: 55-62.

北海道におけるカラフトマスの沿岸漁獲量は1980年後半から著しく増加した。時期を同じくして、ふ化放流事業が発展してきたため、ふ化放流事業によってカラフトマスが増加したという指摘がある。しかし、放流数が安定した1990年以降に偶数年と奇数年で豊漁不漁がみられ、放流数のみで資源変動を説明するのは難しい状況になっている。そこで、1969から2003年の漁獲数データを用いて、ふ化放流数に加えて自然産卵と気候変動がカラフトマスの資源変動に及ぼす影響について調べた。解析には、複数の説明変数を考慮したゴンペルツ型個体群モデルを用いた。気候変動のパラメータには、冬の厳しさ指数(月平均気温の第一主成分)、産卵期の降水量、ALPI(アリューシャン低気圧指数)の3つを用いた。その結果、カラフトマスの資源変動に及ぼす有意な説明変数として、ふ化放流数のほかに自然産卵と気候変動のパラメータが選択された。漁獲数に占める自然産卵由来の割合は6割程度と推定された。以上の結果から、カラフトマスの資源変動には、自然産卵と気候変動も大きな影響を及ぼしていると考えられた。また、ふ化放流の規模が縮小しているロシアにおいても、カラフトマスおよびサケの回帰数が増加している。日本における近年のカラフトマス資源の増大は、ふ化放流事業の発展に起因すると言うよりも、気候変動によって生じたと考える方が穏当かも知れない。