Does size matter most? the effect of growth history on probabilistic reaction norms for salmon maturation
Morita, K. & Fukuwaka, M. (2006)
Evolution, 60: 1516-1521.

[目的] 多くの生物では大きい個体ほど成熟率が高くなる。そして、体長が成熟開始を決定する近接要因と仮定される場合がほとんどである。しかし、体長は過去の成長率や年齢が反映されたものである。脊椎動物に関する生理学的な研究によると、成長ホルモン(GH)やインスリン様成長因子(IGF-I)といった成長状態に関与する内分泌物が成熟開始に関係することが知られている。本研究では、過去の成長履歴がサケの成熟開始におよぼす影響について調べた。
[方法] 北海道の斜里川に遡上したサケの魚体測定データを用いた。また、鱗の年輪間隔から各年齢の成長量を推定した。ほとんどの個体(9割)は4歳か5歳で成熟していたため、ここでは4歳か5歳で成熟した個体について調べた。4歳で成熟するか否かの決定は、1年弱前の3歳の年輪ができる時期に起こると仮定した。ロジスティック回帰モデルを用いて、体長が成熟を規定するモデルと、成長履歴が成熟を規定するモデルを比較した。
[結果] 3歳時の体長が大きい個体ほど4歳で成熟する確率は有意に高くなった。体長を構成している各年齢の成長量の中で、どれが成熟率を規定しているのか変数減少法のロジスティック回帰分析を行った。その結果、2年目と3年目の成長量が有意な説明変数として選択された。特に3年目の成長量が成熟開始に強く関係しており、体長を説明変数とするモデルよりも、3年目の成長量だけを説明変数としたモデルの方がAICは著しく小さかった。以上のことから、体長というよりも最近の成長状態のほうが成熟開始に強く関係していることが示唆された。